本当に欲しいものを手に入れるために、大切なものを手放す覚悟
とうとう、彼女が留学する日がやってきた。実感が全然ない。しばらく会えなくなるのに、不思議な感じ。彼女の新しい門出をなるべく近くで応援したかったので、見送りに行くことに。そういえば、誰かを空港まで見送りに行くこと自体、初めてだな。
駅で待ち合わせをして、空港まで電車で行く。軽く食事をして、チェックインを済ませる。時間がまだあったので、コーヒーを飲みながら、空港内を散歩する。空港のベンチに座って、出発の時間を待つ。お互い、まだ遠距離になる実感はない。
登場時間の一時間前。そろそろ手荷物検査や出国手続きをしなきゃということで、手荷物検査の入口へ進む。ここから先は、見送り客は入れない。僕は、ずっと引いてきたキャリーバックを彼女に渡した。ここで、彼女の様子が変わった。
海外に旅立つ実感が出てきたようで、彼女は泣き出した。寂しい、と。まぁ、そうだよね。これまでほぼ毎日会ってたのが、しばらくは会えなくなるのだから。でも、そんなに悲しむのならば、無理して行かなくてもいいんじゃないの?と浅はかな僕は一瞬思ってしまった。
僕に今できることは、彼女の応援をすること。震える彼女の肩を抱き寄せて、激励の言葉をかける。頷く彼女。顔を上げて目が合うと、また泣きだす。ということをしばらく繰り返す。しばらくして決心したのか、ぐいっと顔を拭き、歯を食いしばって「行ってくる」と彼女に僕は言った。彼女は僕に「後で読んでね。」と一通の手紙をバックパックから取り出して手渡すと、小さな体に不釣り合いな大きなキャリーバックと、これまた大きなバックパックを引っ張って、手荷物検査のゲートをくぐって行った。
もし飛行機が飛ばなかったときに備えて、しばらく空港内で待つことに。