【小雨降る日常に思うこと】
いつもの朝。
ビジネスマンの波に乗って、出勤する。
ここ最近天気がすっきりせず、
冷たい雨がしとしとと降り注ぐ。
この日もそんな天気だった。
田町近辺は、一本道を外れると静かな住宅街へ入り、
だいぶ静かである。僕が出勤で使う道も、あまり車が通らず、
ときおり、頭上をモノレールが滑っていくだけであった。
スーツ姿の男性と、控えめの服装をした女性が、
どことなく急ぎ足でオフィスへ向かう。
みんな耳にイヤホンをつけて、音楽や英会話を聴いている。
ふと遠くに、誰かがうずくまっているのが見えた。
歩道の上で、傘をさしている。
おそらく・・・女性。
そこで人が避けるために、道を膨らんでいた。
どうしたのだろう。体調でも崩してしまったのだろうか。
暫定女性は、こちらに背を向け、じっと動かない。
そのそばを通り過ぎる人も、関心を示さない。
どんどんと近づいていき、暫定が確信に変わったころ、
女性の傘がくるりと向きを変え、中の様子が見えた。
何かに…手を差し伸べている?
さらに近づき、女性の傘の模様がはっきりわかるくらいまで近づくと、
どこからか、とてもか細い声が聞こえてきた。
「にゃ〜」
猫!
冷たい雨が降る中、垣根の中で震えていた猫に対して
女性は手を差し伸べていたのだ。
僕も目では確認できないできなかったが、
道路からでは見えない位置、
しかも雨で声さえもかき消され、
みんな気がつかない。
そんな中で、この女性は猫の声を聞きつけ、
その場にかがみこんで猫を見つけ出したに違いない。
結局、僕も時間ぎりぎりだったので、このお話はここまで。
無力で行動力のない僕は、何のアクションも起こせなかった。
あ〜もう。うう、ちょっと自己嫌悪。
あの女性は、すごいなぁ。
広いこの街で、小さな生命の発する小さなシグナルをキャッチし、
彼を助けようと実行できる正義感と思いやりと実行力。
自分に時間的・物的なゆとりがあるときに、
周りに気を使うのは当たり前のこと。
忙しかったり、大変なときに
どれだけ周りに気を配れるかが
大事になってくるのだろう。